大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(う)1155号 判決

検察官が、供述調書を作成する際にこれを供述者に読み聞けねばならないことは、刑事訴訟法第百九十八条第四項、第二百二十三条第二項の規定しているところであるが、この手続が仮にとられなかつたとしても、供述調書が、ただちに証拠能力を失うものではなく、同法第三百二十二条、第三百二十一条の要件を充たすかぎりこれを証拠とすることができるものといわねばならないことは、すでに最高裁判所が判例(昭和二五年(あ)第三〇九八号、同二八年一月二七日第三小法廷判決―最高裁判所判例集第七巻第一号一九四頁)とするところである。なるほど検察官池上努に対する被告人の第二回供述調書の作成者である検察事務官谷戸省吾の原審における証言によれば、これが調書の作成に当りこれを読み聞けた事実のないことは洵に所論のとおりではあるけれども、該調書は、検察官において、被告人による任意の供述を被告人の面前で一句一句整理して同証人に口授し、若しこれが整理口授に誤があるときは、被告人の申出によりその都度これを訂正口授する方法によつて録取作成されたもので、被告人は終始その内容を熟知し、誤のないことを認めてその調書に署名指印したものであることが認められ、その記載の確実なことを疑うに由がないのみならず、記録を精査するも、他にこれが調書における供述の任意性を疑うべき何等の事由もこれを認め得るに由のないところであるから、刑事訴訟法第三百二十二条第一項の定むるところに照らし、被告人の署名指印があり、且つ被告人に不利益な事実の承認を内容とする該供述調書の証拠能力において何等欠くるものありとすることはできない。検察官においてこれが調書を読み聞けなかつたことを理由に、その任意性乃至は証拠能力を否定し、原審がこれを証拠に採用したことを非難する所論は採用し難く、論旨は理由がない。

(裁判長判事 大塚今比古 判事 三宅富士郎 判事 河原徳治)

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